日記

どこにでもいる人の、ありふれた日記です。

幼なじみが結婚した

その日の朝は雨が降っていたのに、お昼頃になると晴れてきて、なんだか良いことが起きそうな気がした。けれども、本当に気がしただけで、その日幼なじみが結婚したんだった。

披露宴は夕方からだったので、昼過ぎまでダラダラ過ごした。こういう場に出るのは初めてのことだったけれど、お母さんのドレスやバッグを借りたりしていたら、結局自分で用意したのは、キラキラの髪どめだけだった。ご祝儀袋に名前を書くのに意外と時間がかかってしまって、ギリギリの時間に家を出た。相変わらず私は、ギリギリの女だ。今日くらい、ちゃんとすれば良かったのに。けれども、化粧も髪型もいつもとあまり変わらなくすることで、私は、ささやかな抵抗をしていたのかもしれない。
式場に着いて、あたりを見渡すと、知ってる顔はほとんどなかった。幼なじみだから、親族を知ってるのは当たり前だけれど、それくらい。幼なじみは、私のような昔の友達はあまり呼んでいないようだった。それって今の環境が好きだと言ってることと同じで、そのことが私をさらに悲しくさせた。本当だったら、私のことも呼びたくなかったかもしれない。むしろそうであってほしいと思った。

式が始まって、新郎と新婦の姿を見た瞬間、涙が出そうだった。それは感動していたからではないことは明白だったのだけど、この気持ちを認めてしまったら、申し訳なくなって、式場から逃げ出してしまいそうだったので、何も考えないようにしていた。
式も中盤に差し掛かり、各テーブルのロウソクへ2人が火を付けに回ってきた時に、幼なじみが、私を見て「ありがとう」と言った。私は、ただ黙って頷くことしかできなかった。私を呼んだことを、少しでも後悔してほしいと思っていたけれど、幼なじみは、そんなことはなくて、心から私に祝ってもらいたいようだった。それから私は、幼なじみの大切な人たちに囲まれて、私の知らない幼なじみの話を聞くたびに、苦しくなってしまった。
式が終わって、一緒に参加した友人と個人的に開いた二次会で、もしかしたら隣は、(私)だったかもしれないのにねと言われた時に、素直にそうかもなぁと思ってしまった私がいた。私たちは、幼なじみ以上の関係はなかったけれど、それ以外の何かを感じさせる雰囲気があった。例えば家族とか、そういった類のものだったはずだけども、これは、どちらかが結婚した瞬間に、ただの友人とならざるを得ないものでもあった。
なんてことを考えたりしてたのだけど、まあ、結婚はめでたい。ご飯も、おいしかった。式場にあった花は、とてもきれいだったのだけど、どうせ枯れるからと、持ち帰って来なかった。